絵の中の男  妻の描いた絵の中にいる男は、私ではない。私ではな い笑っている男が、絵の中から食事をする私をみている。 食事とは縁のない絵の中の男は、食事をしている私を見 て幸福そうだ。男の幸福が、食事以上に私を満腹させる。 だから、私は絵の中の男に向かって、小さくゲップする。 嫌いだから。