警察官
春の日に誘われて散歩する僕を、まだ若い警察官が追
いかけてくる。この町に来てから、顔をあわせたことの
ない警察官だ。僕ももう、この現象には慣れっこだ。彼
は別に、僕が犯罪を犯したから追いかけてくるわけでは
ない。話しかけてくるわけでもない。ただ、見張ってい
るだけなのだ。善意が暮らしを支配するこの町で、起こ
るはずもない犯罪を予防するために存在する警察官。彼
等は、すべての可能性を予測する。見知らぬ僕の存在は、
すでに彼にとっての事件なのだ。彼は、見張りつづける。
息苦しいほどの善意で、僕を犯罪者にしないために。