伊東日記 2003年大晦日

上着の必要も無いほど暖かな大晦日だったが、今年は銭湯に行かないでしまった。 小雨がぱらついただけで、歩いて3分ほどの距離にある温泉に行くのが億劫になるのは、この町に住みなれたせいだ。 近所の銭湯(温泉)が百七十円と手軽な上に、フィットネスの風呂も温泉なのだから。 天気が悪いのにわざわざ足を伸ばしてまで出かけようという気がなくなっている。贅沢な話だ。
 その代わりに今年はこうやって昼間からうだうだと、詩を書いたり伊藤日記の続きを書いたりして過ごした。 現在午後七時半。これまでに八編詩を書いた。出来については後で読み直して見なければわからないが、「ラジオの男」を来年こそは詩集の形にしたいという思いが強い。 何しろ、最初にこの詩集の着想が浮かんでから三十年近く経つ。何度も忘れかけたけれど、引っ越すたびに何が入っているかわからなかった段ボール箱から書きかけの原稿が出てきたりして、再度挑戦という気にさせられる。 それでいて、完成できなかったのは、実際の私とこの詩の中を生きている私の間にずれがあったというか、年齢が足りなかったからではないかという気がしている。
 そんなことで明日からは2004年だ。この原稿も、ホームページに載せるのは明日以降ということになるのだろう。 年に一回ではさまにならないので、来年こそはもう少しまめに詩も日記も書こうと決意をしたところで七時四十分。書き納めだ。


伊東日記 2004年1月4日

正月休みが今日で終わる。それ以上の意味はないんだけれど、暮れからのあれこれを書いてみたい。
 まず、この暖かさだ。大晦日の項でも書いたけれど、私の56年の人生ではじめて経験する暖かな正月だ。俗論としては、もう温暖化は疑いようのないところまできていることを肌で感じる。
 そんな暖かな正月2日には、伊東から千葉県の市川まで母を訪ねていった。死んだ父の墓参りが、毎年このあたりの日ということになっている。やや内陸にある市川霊園は、街中と比べて温度が低いのだけれど、この日は末の息子の鷹介が長袖のシャツ一枚。私もその下にTシャツを一枚加えただけという軽装でも寒さを感じなかった。
 帰途、市川インターから東名を目指すも、錦糸町の先の渋滞表示が真っ赤になっているのにめげて、横羽線から戸塚に抜けて西湘バイパスで小田原というコースを取る。もちろん、その先にはさらに真鶴道路や、さらにそこから熱海までの有料道路など課金箇所がいっぱいあるのだが、それは別の話だ。
戸塚の料金所を出ると、渋滞で有名な国道一号線の原宿でこの日も渋滞。瞬く間に夕陽になる。ラジオでは東名の上りはもちろん下りの渋滞情報も流れていたので、多少混んではいてもこのコースが正解だったと息子に説明する。まだ16歳の息子は運転しないので、あまり私の解説を信用していない。私としてはもう少し早い時間に湘南海岸に出て、海と夕陽の絵に描いたような情景を見せてやろうと思ったのだが、その思惑は外れてすっかり日は落ちていた。考えてみれば、夕陽と海の取り合わせは別にして、朝陽と海ならば伊東でいつでも見ることができる。それでも、ドライブしていたり電車に乗っていて海が見えると軽い興奮状態になるのはなぜだろう。これがほかの人と共通の感覚なのかどうか自信がない。少なくとも伊東の住人は、電車に乗ってわざわざ海側の席を取っているようには見えない。
 驚いたのは、西湘バイパスの上り線がすごく混んでいたことで、東京に帰る人が多いんだなという印象だったのが、この渋滞の列が小田原を越えて湯河原まで続いていた。私たちの帰宅時間は7時半ころだったが、あのあたりで渋滞に巻き込まれた人たちの帰宅は深夜になっていただろう。観光地に住んでみると、朝のうちにこちらを抜け出し、帰りもみんなとは逆方向になるので、こういうときには得をしたような感じがする。ただし、日ごろ東京に出ようとすると遠いのは事実だから、街が好きな子どもたちにとっては、ちっとも便利ではない。この件では一年が過ぎた今でもうらまれている気がする。
 本日4日朝、窓から135号線を見ると上下線ともそれほど混んでいない。正月が終わったことを目で感じた。


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